Pythonでサンプルコードから学ぶマルチプロセス:CPUバウンドタスク、I/Oバウンドタスク、キュー、共有メモリ
Pythonにおけるマルチプロセスとマルチスレッド
- マルチスレッド: 1つのプロセス内で複数のスレッドを実行する。
- マルチプロセス: 複数の独立したプロセスを実行する。
それぞれ異なる利点と欠点があり、状況に応じて使い分ける必要があります。
マルチスレッドの利点と欠点
利点:
- 処理速度が速い。
- 少ないメモリで動作する。
- 共有メモリが容易。
欠点:
- GIL (Global Interpreter Lock) の存在により、真の並列処理ができない。
- スレッド間のデータ競合が発生する可能性がある。
マルチプロセスの利点と欠点
利点:
- GILの影響を受けずに真の並列処理が可能。
- スレッド間のデータ競合が発生しない。
欠点:
- 処理速度がマルチスレッドよりも遅い。
- 多くのメモリを使用する。
- 共有メモリが難しい。
マルチプロセスにおけるロック
マルチプロセスでは、複数の独立したプロセスが同時にメモリにアクセスするため、データ競合が発生する可能性があります。これを防ぐために、ロックと呼ばれる機構を用います。
ロックは、共有リソースへのアクセスを制御するものです。プロセスがリソースを使用する前にロックを取得し、使用後はロックを解放する必要があります。
異なるロックの種類
Pythonのマルチプロセスモジュールでは、いくつかの種類のロックを提供しています。
- Lock: 排他的ロック。一度に1つのプロセスだけがリソースにアクセスできる。
- RLock: 再帰ロック。同じプロセスが複数回ロックを取得できる。
- Semaphore: セマフォ。リソースへのアクセス許可数を制御できる。
マルチプロセスにおけるロックの例
以下は、Lock
を使って共有リソースへのアクセスを制御する例です。
import multiprocessing
# 共有リソース
counter = 0
def worker(lock):
# ロックを取得
lock.acquire()
# 共有リソースを操作
global counter
counter += 1
# ロックを解放
lock.release()
if __name__ == '__main__':
# ロックを作成
lock = multiprocessing.Lock()
# 複数のプロセスを起動
processes = [multiprocessing.Process(target=worker, args=(lock,)) for _ in range(4)]
for p in processes:
p.start()
# すべてのプロセスが終了するまで待機
for p in processes:
p.join()
# 共有リソースの最終的な値
print(counter)
この例では、4つのプロセスが同時にcounter
変数をインクリメントしようとします。しかし、Lock
を使うことで、一度に1つのプロセスしかcounter
変数にアクセスできないため、データ競合が発生することはありません。
Pythonにおけるマルチプロセスとマルチスレッド、そしてマルチプロセスにおけるロックについて解説しました。
マルチタスク処理を行う際には、それぞれの方法の利点と欠点を理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。また、マルチプロセスでは、データ競合を防ぐためにロックを使用する必要があります。
マルチプロセスを使ったサンプルコード
CPU バウンドタスクの並列処理
import multiprocessing
def worker(num):
# CPU バウンドな処理
for i in range(1000000):
pass
if __name__ == '__main__':
# CPU コア数分のプロセスを起動
num_workers = multiprocessing.cpu_count()
processes = [multiprocessing.Process(target=worker, args=(i,)) for i in range(num_workers)]
for p in processes:
p.start()
# すべてのプロセスが終了するまで待機
for p in processes:
p.join()
I/O バウンドタスクの並列処理
import multiprocessing
import requests
def worker(urls):
# I/O バウンドな処理
for url in urls:
requests.get(url)
if __name__ == '__main__':
# URL のリスト
urls = ["https://www.google.com", "https://www.yahoo.co.jp", "https://www.bing.com"]
# 複数のプロセスで処理
num_workers = multiprocessing.cpu_count()
chunk_size = len(urls) // num_workers
processes = [multiprocessing.Process(target=worker, args=(urls[i * chunk_size:(i + 1) * chunk_size],)) for i in range(num_workers)]
for p in processes:
p.start()
# すべてのプロセスが終了するまで待機
for p in processes:
p.join()
このコードは、I/O バウンドな処理を複数のプロセスで並列処理する例です。URL のリストを分割し、それぞれ異なるプロセスで処理することで、処理時間を短縮することができます。
キューを使った通信
import multiprocessing
import queue
def producer(q):
# データを生成
for i in range(10):
q.put(i)
def consumer(q):
# データを消費
while True:
data = q.get()
if data is None:
break
print(data)
if __name__ == '__main__':
# キューを作成
q = queue.Queue()
# プロデューサーとコンシューマーを起動
producer_process = multiprocessing.Process(target=producer, args=(q,))
consumer_process = multiprocessing.Process(target=consumer, args=(q,))
producer_process.start()
consumer_process.start()
# プロデューサーが終了するまで待機
producer_process.join()
# キューに終了通知を送信
q.put(None)
# コンシューマーが終了するまで待機
consumer_process.join()
このコードは、キューを使ってプロセス間通信を行う例です。プロデューサーはデータをキューに生成し、コンシューマーはキューからデータを取り出して処理します。
共有メモリを使った通信
import multiprocessing
import array
def worker(shared_array):
# 共有メモリへのアクセス
for i in range(10):
shared_array[i] += 1
if __name__ == '__main__':
# 共有メモリを作成
shared_array = array.array('i', [0] * 10)
# 複数のプロセスで共有メモリへアクセス
num_workers = multiprocessing.cpu_count()
processes = [multiprocessing.Process(target=worker, args=(shared_array,)) for i in range(num_workers)]
for p in processes:
p.start()
# すべてのプロセスが終了するまで待機
for p in processes:
p.join()
# 共有メモリの内容
print(shared_array)
このコードは、共有メモリを使ってプロセス間通信を行う例です。複数のプロセスが同じメモリ領域にアクセスすることで、データを共有することができます。
その他のサンプルコード
- [Pythonのmultiprocessingの使い方を現役エンジニアが解説【初心者向け】](https://m
マルチプロセスとマルチスレッド以外での並列処理方法
非同期処理は、複数の処理を同時に開始し、それぞれが完了するのを待たずに次の処理を開始する方法です。Pythonでは、asyncio
モジュールを使って非同期処理を行うことができます。
import asyncio
async def worker(num):
# 非同期処理
await asyncio.sleep(1)
print(num)
async def main():
# 複数の非同期処理を同時に開始
tasks = [asyncio.create_task(worker(i)) for i in range(10)]
await asyncio.gather(*tasks)
if __name__ == '__main__':
asyncio.run(main())
このコードは、asyncio
モジュールを使って非同期処理を行う例です。10個の非同期処理を同時に開始し、それぞれが完了するのを待たずに次の処理を開始します。
GPU を使った並列処理
GPU は、CPU よりも多くの処理を並列処理できる能力を持っています。Pythonでは、PyTorch
やTensorFlow
などのライブラリを使って、GPU を使った並列処理を行うことができます。
import torch
def worker(num):
# GPU を使った処理
x = torch.rand(1000, 1000)
y = torch.rand(1000, 1000)
z = torch.mm(x, y)
if __name__ == '__main__':
# GPU を使用
device = torch.device("cuda")
# 複数の処理をGPU で実行
num_workers = torch.cuda.device_count()
processes = [multiprocessing.Process(target=worker, args=(i,)) for i in range(num_workers)]
for p in processes:
p.start()
# すべてのプロセスが終了するまで待機
for p in processes:
p.join()
このコードは、PyTorch
を使ってGPU を使った並列処理を行う例です。10個の処理をGPU で実行し、CPU で実行するよりも高速に処理することができます。
分散処理は、複数のコンピュータで処理を分散させる方法です。Pythonでは、Dask
やRay
などのライブラリを使って、分散処理を行うことができます。
import dask
def worker(data):
# 分散処理
return data.sum()
if __name__ == '__main__':
# 分散処理を実行
dask.distributed.Client()
results = dask.compute(worker, data=[1, 2, 3, 4, 5])
print(results)
このコードは、Dask
を使って分散処理を行う例です。5つのデータを5つのコンピュータに分散させ、処理結果を集計します。
マルチプロセスとマルチスレッド以外にも、非同期処理、GPU を使った並列処理、分散処理など、さまざまな方法で並列処理を行うことができます。
それぞれの方法には利点と欠点があり、状況に応じて使い分けることが重要です。
SystemErrorとその他の例外
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