PyTorchでコードを簡潔化かつ高速化: torch.func.vmap によるJAXライクな関数変換

2024-04-09

PyTorch の JAX ライクな関数変換: torch.func.vmap の詳細解説

PyTorch 1.11 からベータ版として導入された torch.func モジュールは、JAX ライクな関数変換機能を提供します。この機能は、PyTorch コードをより効率的に実行し、開発者の生産性を向上させるための強力なツールです。

本解説では、torch.func モジュールの代表的な機能である vmap について、詳細な解説を行います。

vmap は、ベクトル化変換と呼ばれる関数変換の一つです。ベクトル化変換は、複数のスカラー入力を受け取る関数を、ベクトル入力を受け取る関数に変換します。これは、ループ処理を自動的にベクトル化することで、コードを簡潔化し、実行速度を向上させる効果があります。

vmap の仕組み

vmap は、入力と出力をバッチ化することでベクトル化を実現します。具体的には、以下の手順で動作します。

  1. 入力テンソルをバッチ次元で分割します。
  2. 分割された各テンソルに対して、元の関数を適用します。
  3. 適用結果をバッチ次元で結合します。

vmap の利点

vmap を使用することで、以下の利点が得られます。

  • コードの簡潔化: ループ処理を記述する必要がなくなり、コードが簡潔になります。
  • 実行速度の向上: ベクトル化処理により、実行速度が向上します。
  • メモリ使用量の削減: バッチ処理により、メモリ使用量が削減されます。

vmap の使用例

vmap は、さまざまな場面で使用できます。以下に、いくつかの例を紹介します。

  • ベクトルの加算:
def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = torch.tensor(1)
y = torch.tensor(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = torch.tensor([1, 2, 3])
y = torch.tensor([4, 5, 6])
z = vmap(add_vectors)(x, y)
  • 行列の積:
def matmul(a, b):
  return torch.matmul(a, b)

# スカラー入力
a = torch.tensor([[1, 2], [3, 4]])
b = torch.tensor([[5, 6], [7, 8]])
c = matmul(a, b)

# ベクトル入力
a = torch.stack([
  torch.tensor([[1, 2], [3, 4]]),
  torch.tensor([[5, 6], [7, 8]]),
])
b = torch.stack([
  torch.tensor([[9, 10], [11, 12]]),
  torch.tensor([[13, 14], [15, 16]]),
])
c = vmap(matmul)(a, b)

vmap の注意事項

vmap を使用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • vmap は、すべての関数に対して使用できるわけではありません。
  • vmap は、バッチ処理を行うため、メモリ使用量が増加する可能性があります。
  • vmap は、複雑な関数に対して使用すると、コードが分かりにくくなる可能性があります。

torch.func.vmap は、PyTorch コードを効率的に実行するための強力なツールです。vmap の仕組みと利点、使用例、注意事項を理解することで、開発者は vmap を効果的に活用することができます。



PyTorch torch.func.vmap サンプルコード集

  • スカラーベクトルの加算・減算・乗算・除算
  • ベクトル同士の内積・外積
  • 行列の積・転置・逆行列

統計関数

  • 平均・分散・標準偏差
  • 最小値・最大値
  • ヒストグラム

数学関数

  • 指数関数・対数関数
  • 三角関数
  • ガンマ関数

微分積分

  • 関数の微分・積分
  • 連立微分方程式の解法

機械学習

  • 線形回帰
  • ロジスティック回帰
  • ニューラルネットワーク

画像処理

  • 画像の読み込み・保存
  • 画像の回転・反転・切り抜き
  • 画像フィルタ

音声処理

  • 音声の読み込み・保存
  • 音声のスペクトル分析
  • 音声合成

自然言語処理

  • テキストの分かち書き
  • テキストのベクトリアイゼーション
  • 感情分析

サンプルコードの入手方法

以下のリポジトリから、サンプルコードを入手できます。

  • 上記以外にも、torch.func.vmap はさまざまな場面で使用できます。
  • サンプルコードを参考に、torch.func.vmap を活用して、コードを簡潔化し、実行速度を向上させてください。


PyTorch でベクトル化処理を行う他の方法

手動でループ処理を行う

最も基本的な方法は、手動でループ処理を行うことです。

def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = torch.tensor(1)
y = torch.tensor(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = torch.tensor([1, 2, 3])
y = torch.tensor([4, 5, 6])

z = []
for i in range(len(x)):
  z.append(add_vectors(x[i], y[i]))

z = torch.tensor(z)

この方法は、コードが分かりやすくなるという利点がありますが、コード量が膨大になり、実行速度が遅くなるという欠点があります。

torch.jit を使用すると、Python コードを TorchScript にコンパイルすることができます。TorchScript は、PyTorch よりも高速に実行できる中間言語です。

def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = torch.tensor(1)
y = torch.tensor(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = torch.tensor([1, 2, 3])
y = torch.tensor([4, 5, 6])

add_vectors_jit = torch.jit.trace(add_vectors, example_inputs=(x[0], y[0]))

z = add_vectors_jit(x, y)

この方法は、実行速度を向上させるという利点がありますが、コードの書き方が複雑になるという欠点があります。

numba を使用する

numba は、Python コードを機械語にコンパイルするツールです。機械語は、C言語などのコンパイル言語よりも高速に実行できます。

from numba import jit

@jit
def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = torch.tensor(1)
y = torch.tensor(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = torch.tensor([1, 2, 3])
y = torch.tensor([4, 5, 6])

z = add_vectors(x, y)

この方法は、実行速度を大幅に向上させるという利点がありますが、コードの書き方が複雑になるという欠点があります。

その他のライブラリを使用する

autogradjax などのライブラリを使用すると、ベクトル化処理を簡単に記述することができます。

# autograd

import autograd.numpy as np

def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = np.array(1)
y = np.array(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = np.array([1, 2, 3])
y = np.array([4, 5, 6])

z = add_vectors(x, y)

# jax

import jax.numpy as jnp

def add_vectors(x, y):
  return x + y

# スカラー入力
x = jnp.array(1)
y = jnp.array(2)
z = add_vectors(x, y)

# ベクトル入力
x = jnp.array([1, 2, 3])
y = jnp.array([4, 5, 6])

z = add_vectors(x, y)

これらのライブラリは、PyTorch とは異なる API を使用するため、学習コストがかかるという欠点があります。

PyTorch でベクトル化処理を行う方法はいくつかあります。それぞれの方法には、利点と欠点があります。

  • 手動でループ処理を行う: コードが分かりやすい
  • torch.jit を使用する: 実行速度が速い
  • numba を使用する: 実行速度が大幅に向上
  • その他のライブラリを使用する: ベ



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