PyTorch Quantization の QAT とは? default_qat_qconfig でできること
PyTorch Quantization の QAT における torch.ao.quantization.qconfig.default_qat_qconfig の詳細解説
torch.ao.quantization.qconfig.default_qat_qconfig
は、PyTorch Quantization の手法の一つである Quantization Aware Training (QAT) におけるデフォルトの量子化設定 (QConfig
) を定義する関数です。この関数は、QAT を実行する際に、モデルの各層に対してどのような量子化を行うかを決定します。
QAT とは
QAT は、モデルの訓練と量子化を同時に行う手法です。従来の静的量子化とは異なり、訓練中に仮数点演算と量子化演算を混在させることで、精度と性能のバランスを向上させることができます。
default_qat_qconfig
は、QAT におけるデフォルトの量子化設定を定義します。具体的には、以下の項目を指定します。
- activation:活性化関数の量子化設定
- observer:量子化後の統計情報収集に使用するオブザーバー
- dtype:量子化後のデータ型
- input_quantized:入力データが量子化されているかどうか
デフォルト設定
default_qat_qconfig
のデフォルト設定は以下の通りです。
default_qat_qconfig = QConfig(
activation=default_observer,
weight=default_weight_observer,
input_quantized=False,
)
- activation:
default_observer
は、MinMaxObserver を使用して、活性化関数の最小値と最大値を観察します。 - weight:
default_weight_observer
は、MinMaxObserver を使用して、重みの最小値と最大値を観察します。 - input_quantized:デフォルトでは、入力データは量子化されていないと仮定されます。
設定の変更
default_qat_qconfig
は、必要に応じて変更することができます。例えば、以下のコードは、活性化関数を 8 ビット整数で量子化するように設定します。
qat_qconfig = QConfig(
activation=default_observer(dtype=torch.qint8),
weight=default_weight_observer,
input_quantized=False,
)
QAT の実行
default_qat_qconfig
を含む QConfig を使用して、QAT を実行するには、以下の手順が必要です。
- モデルを
torch.quantization.prepare
で準備します。 - モデルを訓練します。
- モデルを
torch.quantization.convert
で変換します。
補足
- QAT は、モデルの精度と性能に大きな影響を与える可能性があります。
- QAT を実行する前に、モデルのアーキテクチャと訓練データセットを検討する必要があります。
- QAT は、まだ発展途上の技術であり、すべてのモデルでうまく機能するとは限りません。
用語解説
- 量子化:浮動小数点数演算を、精度を保ちながら、ビット幅の低い整数演算に変換する技術
- Quantization Aware Training (QAT):モデルの訓練と量子化を同時に行う手法
- QConfig:量子化設定
- Observer:量子化後の統計情報収集を行うモジュール
- dtype:データ型
PyTorch Quantization QAT サンプルコード
画像分類モデル
import torch
from torchvision import models
# モデル定義
model = models.resnet18()
# QAT 準備
model.prepare_qat()
# 訓練
...
# 変換
model.convert()
# 推論
...
自然言語処理モデル
import torch
from transformers import AutoModelForSequenceClassification
# モデル定義
model = AutoModelForSequenceClassification.from_pretrained("bert-base-uncased")
# QAT 準備
model.prepare_qat()
# 訓練
...
# 変換
model.convert()
# 推論
...
カスタムモデル
import torch
from torch.nn import Linear, ReLU
# モデル定義
class MyModel(torch.nn.Module):
def __init__(self):
super().__init__()
self.fc1 = Linear(10, 10)
self.relu = ReLU()
self.fc2 = Linear(10, 1)
def forward(self, x):
x = self.fc1(x)
x = self.relu(x)
x = self.fc2(x)
return x
model = MyModel()
# QAT 準備
model.prepare_qat()
# 訓練
...
# 変換
model.convert()
# 推論
...
- 上記のサンプルコードは、PyTorch Quantization の QAT を使用して、画像分類モデル、自然言語処理モデル、カスタムモデルを量子化する例です。
- 各サンプルコードでは、モデル定義、QAT 準備、訓練、変換、推論の順序で処理を行います。
- QAT 準備では、
model.prepare_qat()
を使用して、モデルを QAT 用に準備します。 - 訓練では、通常の訓練と同様に、モデルを訓練します。
- 変換では、
model.convert()
を使用して、モデルを量子化モデルに変換します。 - 推論では、量子化モデルを使用して、推論を行います。
- 上記のサンプルコードは、基本的な例です。
PyTorch Quantization QAT の代替方法
静的量子化 (Post Training Quantization, PTQ)
- 概要: 訓練済みのモデルを量子化する手法
- 特徴:
- QAT よりも精度が高い
- QAT よりも高速に推論できる
- モデルのアーキテクチャと訓練データセットに制限がない
- 欠点:
- QAT よりも複雑な設定が必要
- QAT よりも時間がかかる
動的量子化
- 概要: 推論時に動的に量子化を行う手法
- 特徴:
- モデルサイズとメモリ使用量を削減できる
- 計算速度を向上できる
- 欠点:
- 静的量子化よりも精度が低い
- すべてのモデルで利用できるわけではない
量子化感知訓練 (Quantization Aware Training, QAT)
- 概要: 訓練時に量子化の影響を考慮してモデルを訓練する手法
- 特徴:
- 静的量子化と動的量子化のバランスが取れた精度と性能を実現できる
- 比較的簡単な設定で利用できる
- 欠点:
- 動的量子化よりも時間がかかる
どの量子化方法を選ぶべきかは、以下の要件によって異なります。
- 精度: 静的量子化 > QAT > 動的量子化
- 複雑さ: QAT > 静的量子化 > 動的量子化
- モデルのアーキテクチャ: 静的量子化はすべてのモデルで利用できる
- 訓練データセット: 静的量子化は訓練データセットに制限がない
PyTorch Quantization には、QAT 以外にもいくつかの量子化方法があります。それぞれの方法の特徴を理解し、要件に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
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