Qt GUIにおけるQUndoCommand::mergeWith()とは？

Qt GUIにおけるQUndoCommand::mergeWith()の解説

QUndoCommand::mergeWith() は、Qt GUIにおけるUndo/Redo機能をサポートするクラス QUndoCommand のメソッドの一つです。このメソッドは、2つの QUndoCommand オブジェクトが同じ操作を表しているかどうかを判断し、その場合はそれらを1つのコマンドに統合します。これにより、Undo/Redo履歴をより効率的に管理し、メモリ使用量を削減することができます。

動作

QUndoCommand::mergeWith() は、以下の手順で2つのコマンドを比較します。

1. IDの比較: 両方のコマンドの id() メソッドを呼び出し、IDが一致するかどうかを確認します。IDは、コマンドの種類を識別するために使用されます。
2. 状態の比較: 両方のコマンドの状態を比較します。状態は、コマンドが実行されたときに変更されたデータを表します。

上記2つの比較で一致した場合、QUndoCommand::mergeWith() は true を返し、2つのコマンドは1つのコマンドに統合されます。一致しない場合は false を返し、2つのコマンドはそのまま保持されます。

例

以下の例は、QUndoCommand::mergeWith() を使って2つの QUndoCommand オブジェクトを統合する方法を示しています。

QUndoCommand *cmd1 = new MyCommand(this);
cmd1->setText("Change text to 'Hello'");
cmd1->redo();

QUndoCommand *cmd2 = new MyCommand(this);
cmd2->setText("Change text to 'World'");
cmd2->redo();

if (cmd1->mergeWith(cmd2)) {
  delete cmd2;
}

この例では、cmd1 と cmd2 はどちらもテキストをを変更するコマンドですが、変更する内容は異なります。QUndoCommand::mergeWith() は、2つのコマンドが同じテキストを変更しようとしていることを検出し、それらを1つのコマンドに統合します。

利点

QUndoCommand::mergeWith() を使用することで、以下の利点を得ることができます。

• Undo/Redo履歴の効率化: 同じ操作を表すコマンドを統合することで、Undo/Redo履歴をより短くすることができます。
• メモリ使用量の削減: 統合されたコマンドは1つのオブジェクトとして保持されるため、メモリ使用量を削減することができます。
• パフォーマンスの向上: Undo/Redo操作に必要な処理を削減することで、パフォーマンスを向上させることができます。

注意点

QUndoCommand::mergeWith() を使用する際には、以下の点に注意する必要があります。

• コマンドの状態を正しく比較する: コマンドの状態を比較する際には、すべての変更されたデータを考慮する必要があります。
• 副作用のあるコマンド: 副作用のあるコマンドは、統合されると予期しない結果になる可能性があります。
• 複雑な操作: 複雑な操作を表すコマンドは、統合されると正しく動作しない可能性があります。

QUndoCommand::mergeWith() は、Qt GUIにおけるUndo/Redo機能をより効率的に管理するための便利なツールです。ただし、使用際には上記の注意点に注意する必要があります。

• 本解説は、Qt 5.15.2 を基に作成されています。
• Qtに関するその他の質問にもお答えできますので、お気軽にご連絡ください。

Qt GUIにおけるQUndoCommand::mergeWith()のサンプルコード

この例では、QUndoCommand::mergeWith() を使って、2つの QUndoCommand オブジェクトを統合する方法を示します。この2つのコマンドはどちらもテキストを変更するコマンドですが、変更する内容は異なります。

#include <QApplication>
#include <QUndoCommand>
#include <QLabel>

class MyCommand : public QUndoCommand
{
public:
    MyCommand(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

    virtual void setText(const QString &text);
    virtual const QString &text() const;

protected:
    virtual void redo();
    virtual void undo();

private:
    QString m_text;
};

MyCommand::MyCommand(const QString &text, QWidget *parent)
    : QUndoCommand(parent)
    , m_text(text)
{
}

void MyCommand::setText(const QString &text)
{
    m_text = text;
}

const QString &MyCommand::text() const
{
    return m_text;
}

void MyCommand::redo()
{
    emit textChanged(m_text);
}

void MyCommand::undo()
{
    emit textChanged("");
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QLabel label("Hello, World!");
    label.show();

    MyCommand *cmd1 = new MyCommand("Change text to 'Hello'");
    cmd1->redo();

    MyCommand *cmd2 = new MyCommand("Change text to 'World'");
    cmd2->redo();

    if (cmd1->mergeWith(cmd2)) {
        delete cmd2;
    }

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、以下のようになります。

1. ラベルに "Hello, World!" と表示されます。
2. cmd1 を実行すると、ラベルのテキストが "Hello" に変更されます。
3. cmd1 と cmd2 は QUndoCommand::mergeWith() で統合されるため、Undo/Redo履歴には1つのコマンドしか残りません。
4. Undo操作を実行すると、ラベルのテキストが "Hello" になります。

図形を移動するコマンドを統合する

この例では、QUndoCommand::mergeWith() を使って、2つの QUndoCommand オブジェクトを統合する方法を示します。この2つのコマンドはどちらも図形を移動するコマンドですが、移動距離は異なります。

#include <QApplication>
#include <QUndoCommand>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsItem>

class MyCommand : public QUndoCommand
{
public:
    MyCommand(QGraphicsItem *item, const QPointF &delta, QWidget *parent = nullptr);

    virtual void setDelta(const QPointF &delta);
    virtual const QPointF &delta() const;

protected:
    virtual void redo();
    virtual void undo();

private:
    QGraphicsItem *m_item;
    QPointF m_delta;
};

MyCommand::MyCommand(QGraphicsItem *item, const QPointF &delta, QWidget *parent)
    : QUndoCommand(parent)
    , m_item(item)
    , m_delta(delta)
{
}

void MyCommand::setDelta(const QPointF &delta)
{
    m_delta = delta;
}

const QPointF &MyCommand::delta() const
{
    return m_delta;
}

void MyCommand::redo()
{
    m_item->setPos(m_item->pos() + m_delta);
}

void MyCommand::undo()
{
    m_item->setPos(m_item->pos() - m_delta);
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);
    view.show();

    QGraphicsRect *item = scene.addRect(QRect(0, 0, 100, 100));

    MyCommand *cmd1 = new MyCommand(item, QPointF(50, 0));
    cmd1->

Qt GUIにおけるQUndoCommand::mergeWith()の代替方法

個別のUndo/Redoコマンドを使用する

最も単純な方法は、個別のUndo/Redoコマンドを使用することです。この方法では、各操作に対して1つのコマンドを作成し、それらをUndo/Redo履歴に追加します。利点は、実装が簡単で、どんな操作でも表現できることです。欠点は、Undo/Redo履歴が長くなり、メモリ使用量が増加する可能性があることです。

#include <QApplication>
#include <QUndoCommand>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QLabel label("Hello, World!");
    label.show();

    QUndoCommand *cmd1 = new QUndoCommand;
    cmd1->setText("Change text to 'Hello'");
    label.setText("Hello");
    cmd1->redo();

    QUndoCommand *cmd2 = new QUndoCommand;
    cmd2->setText("Change text to 'World'");
    label.setText("World");
    cmd2->redo();

    return app.exec();
}

カスタムUndo/Redoクラスを使用する

より複雑な操作を表す場合は、カスタムUndo/Redoクラスを使用するのが良いでしょう。この方法では、操作の状態を管理するための独自のロジックを実装することができます。利点は、複雑な操作を効率的に表現できることです。欠点は、実装が複雑になり、バグが発生しやすくなる可能性があることです。

#include <QApplication>
#include <QUndoCommand>
#include <QLabel>

class MyCommand : public QUndoCommand
{
public:
    MyCommand(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

    virtual void setText(const QString &text);
    virtual const QString &text() const;

protected:
    virtual void redo();
    virtual void undo();

private:
    QString m_text;
    QString m_oldText;
};

MyCommand::MyCommand(const QString &text, QWidget *parent)
    : QUndoCommand(parent)
    , m_text(text)
{
}

void MyCommand::setText(const QString &text)
{
    m_text = text;
}

const QString &MyCommand::text() const
{
    return m_text;
}

void MyCommand::redo()
{
    m_oldText = label->text();
    label->setText(m_text);
}

void MyCommand::undo()
{
    label->setText(m_oldText);
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QLabel label("Hello, World!");
    label.show();

    MyCommand *cmd = new MyCommand("Change text to 'World'");
    cmd->redo();

    return app.exec();
}

シグナルとスロットを使用する

簡単な操作の場合は、シグナルとスロットを使用してUndo/Redo機能を実装することができます。この方法では、操作を実行するたびにシグナルを発行し、それをスロットで処理します。利点は、実装が簡単で、コードを簡潔に保つことができます。欠点は、複雑な操作には対応できないことです。

#include <QApplication>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QLabel label("Hello, World!");
    label.show();

    QString oldText;

    QObject::connect(&label, &QLabel::textChanged, [&](const QString &text) {
        oldText = label.text();
    });

    label.setText("World");

    QObject::connect(&label, &QLabel::textChanged, [&](const QString &text) {
        label.setText(oldText);
    });

    return app.exec();
}

どの方法が最適かは、状況によって異なります。シンプルな操作の場合は個別のUndo/Redoコマンドを使用し、複雑な操作の場合はカスタムUndo/Redoクラスを使用するのが良いでしょう。シグナルとスロットは、簡単な操作に適しています。

その他の考慮事項

• パフォーマンス: Undo/Redo操作の頻度が高い場合は、パフォーマンスを考慮する必要があります。カスタムUndo/Redoクラスを使用する場合は、操作の状態を