CMakeでプリプロセッサー定義値を安全に扱う:CMP0005ポリシーの徹底解説
CMakeポリシー CMP0005: プリプロセッサー定義値のエスケープについて
CMake ポリシー CMP0005 は、add_definitions
コマンドで追加されたプリプロセッサー定義値のエスケープ処理を制御します。これは、CMake バージョン 2.6 で導入された比較的新しいポリシーです。
背景
CMake バージョン 2.4 以前では、add_definitions
で渡されるマクロの値は単純なものだけだと想定されていました。しかし、実際には文字列リテラルなど、エスケープが必要な複雑な値も渡されることがあります。
新しい動作 (NEW)
CMake バージョン 2.6 以降では、デフォルトで CMP0005 ポリシーが有効になり、add_definitions
で渡されたすべての値が自動的にエスケープされます。これにより、ほとんどのネイティブビルドツールで正しいプリプロセッサー定義が生成されます。
古い動作 (OLD)
CMP0005 ポリシーが無効の場合、CMake は古い動作になり、エスケープ処理を行いません。これは、CMake バージョン 2.4 以前の動作と同じです。
設定方法
CMP0005 ポリシーは、cmake_policy()
または cmake_minimum_required()
コマンドで設定できます。
# CMake バージョン 3.0 以降
cmake_policy(CMP0005 NEW)
# CMake バージョン 2.6 から 2.8 まで
cmake_minimum_required(VERSION 2.6)
cmake_policy(CMP0005 NEW)
注意事項
- エスケープ処理にはいくつかの制限があります。詳細は、
COMPILE_DEFINITIONS
ターゲットプロパティのドキュメントを参照してください。 - 古い CMake バージョンとの互換性を維持したい場合は、CMP0005 ポリシーを無効にすることができます。ただし、この場合、ビルドが正しく動作しない可能性があります。
例
# プリプロセッサー定義 "FOO" に文字列リテラル "bar" を追加します。
add_definitions(-DFOO="bar")
# CMP0005 ポリシーが有効の場合、"bar" は自動的にエスケープされ、"\""bar\"" となります。
補足
- 上記の説明は、分かりやすくするために簡略化されています。詳細については、上記の参考資料を参照してください。
- 特定の状況で CMP0005 ポリシーを使用するかどうかについて疑問がある場合は、CMake コミュニティに質問することをお勧めします。
CMake ポリシー CMP0005 のサンプルコード
# CMake バージョン 3.0 以降
cmake_policy(CMP0005 NEW)
add_definitions(-DFOO="bar")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: "bar"
説明:
- このサンプルコードでは、CMP0005 ポリシーが有効に設定されています。
add_definitions
コマンドを使用して、プリプロセッサー定義 "FOO" に文字列リテラル "bar" を追加します。message
コマンドを使用して、FOO
マクロの値を出力します。
# CMake バージョン 2.6 から 2.8 まで
cmake_minimum_required(VERSION 2.6)
cmake_policy(CMP0005 NEW)
add_definitions(-DFOO="bar")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: bar
説明:
- このサンプルコードでは、CMake バージョン 2.6 から 2.8 を想定しています。
- CMP0005 ポリシーが有効に設定されています。
# CMake バージョン 2.4 以前
cmake_minimum_required(VERSION 2.4)
add_definitions(-DFOO="bar")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: bar
説明:
- CMP0005 ポリシーは無効です。
# CMake バージョン 3.0 以降
cmake_policy(CMP0005 OLD)
add_definitions(-DFOO="bar")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: bar
これらのサンプルコードは、CMake ポリシー CMP0005 の動作を理解するのに役立ちます。
CMake ポリシー CMP0005 の代替方法
手動でエスケープ処理を行う
CMP0005 ポリシーを無効にする場合は、add_definitions
コマンドで渡されるマクロの値を手動でエスケープする必要があります。
# CMake バージョン 2.4 以前
cmake_minimum_required(VERSION 2.4)
add_definitions(-DFOO=\"bar\")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: "bar"
説明:
- このサンプルコードでは、CMP0005 ポリシーが無効です。
- マクロの値 "bar" は、二重引用符で囲むことで手動でエスケープされています。
STRING()
マクロを使用して、エスケープされたマクロの値を生成することができます。
# CMake バージョン 2.4 以降
cmake_minimum_required(VERSION 2.4)
add_definitions(-DFOO=$(STRING bar))
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: "bar"
説明:
- このサンプルコードでは、
STRING()
マクロを使用して、エスケープされたマクロの値 "bar" を生成しています。
プリプロセッサーを使用して、マクロの値をエスケープすることができます。
# CMake バージョン 2.4 以降
cmake_minimum_required(VERSION 2.4)
add_definitions(-DFOO=\\"bar\\")
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: "bar"
説明:
- このサンプルコードでは、プリプロセッサーを使用して、マクロの値 "bar" をエスケープしています。
外部ツールを使用する
エスケープ処理を行う外部ツールを使用することができます。
# CMake バージョン 2.4 以降
cmake_minimum_required(VERSION 2.4)
# 外部ツール "escape" を使用する
add_custom_command(
OUTPUT escaped_value
COMMAND escape bar
VERBATIM
)
add_definitions(-DFOO=${escaped_value})
message(STATUS "FOO is defined as: ${FOO}")
出力:
FOO is defined as: "bar"
説明:
- このサンプルコードでは、外部ツール "escape" を使用して、マクロの値 "bar" をエスケープしています。
注意事項
- 手動でエスケープ処理を行う場合は、誤りが発生しやすいので注意が必要です。
STRING()
マクロを使用する方法は、比較的安全で簡単です。- プリプロセッサーを使用する方法は、複雑なエスケープ処理を行う場合に役立ちます。
- 外部ツールを使用する方法は、柔軟性がありますが、設定が複雑になる場合があります。
CMake の if() コマンド: デバッグとトラブルシューティング
構文条件式if() コマンドの引数には、条件式を指定します。条件式は、以下のいずれかの形式で記述できます。変数の比較: <variable> <operator> <value>コマンドの存在チェック: COMMAND <command-name>
CMakeにおける"get_target_property()"コマンド: ターゲットの情報を自在に操る
get_target_property()コマンドは、CMakeプロジェクトで定義されたターゲットからプロパティを取得するために使用されます。ターゲットプロパティは、ターゲットのビルド方法や動作を制御するために使用される情報です。構文引数VAR: ターゲットプロパティの値を格納する変数名
CMake find_libraryコマンドとfind_packageモジュールの比較
find_library() コマンドは、CMake で外部ライブラリを見つけるために使用されます。これは、プロジェクトに必要なライブラリを自動的に検出して、ビルドプロセスを簡略化するのに役立ちます。コマンドフォーマット<VAR>: 検索結果を格納する変数名
CMake include() で効率的なビルドを実現
include() は CMake の重要なコマンドの一つで、他の CMake ファイルやモジュールを読み込むために使用されます。 これにより、コードを分割し、再利用性と保守性を向上させることができます。機能他の CMake ファイルを読み込んで、その中のコマンドを実行する
CMake で変数を削除する3つの方法:unset() 以外にも使えるテクニック
<variable_name> は、削除したい変数の名前です。変数の名前は、文字、数字、下線(_)で構成され、先頭に数字以外のアクティブ文字が来る必要があります。変数の削除この例では、MY_VAR という変数を作成し、"Hello, world!" という値を設定します。その後、unset() コマンドを使用して MY_VAR を削除します。2番目の message() コマンドは、MY_VAR が削除されたことを確認するために使用されます。
CMake の Variables に関連する CMAKE_SCRIPT_MODE_FILE のプログラミング
CMAKE_SCRIPT_MODE_FILE は、CMake の "Variables" における特別な変数です。これは、現在実行中の CMake スクリプトファイルのフルパスを格納します。この変数は、以下の状況でのみ使用できます。cmake -P スクリプトモード
「CMAKE_FIND_USE_INSTALL_PREFIX」変数でクロスコンパイル環境を制覇!
CMAKE_FIND_USE_INSTALL_PREFIX は CMake 3.24 以降で導入された変数で、クロスコンパイル環境におけるライブラリやモジュールの検索動作を制御します。これは、異なるアーキテクチャやオペレーティングシステムを対象としたソフトウェア開発において特に重要となります。
CMake find_libraryコマンドとfind_packageモジュールの比較
find_library() コマンドは、CMake で外部ライブラリを見つけるために使用されます。これは、プロジェクトに必要なライブラリを自動的に検出して、ビルドプロセスを簡略化するのに役立ちます。コマンドフォーマット<VAR>: 検索結果を格納する変数名
CMake の INTERFACE_SYSTEM_INCLUDE_DIRECTORIES とは?
INTERFACE_SYSTEM_INCLUDE_DIRECTORIES は、CMake のターゲットプロパティの一つであり、他のターゲットがこのターゲットを依存関係として使用する際に、コンパイル時に自動的に追加されるシステムヘッダーディレクトリを指定します。これは、ターゲットが提供するインターフェースの一部として公開されるヘッダーファイルへのパスを指定するために使用されます。
CMake find_file() コマンドの代替方法:もっと柔軟なファイル検索
<variable>: 検索結果を格納する CMake 変数<file_names>: 検索するファイル名のリスト (スペース区切り)<path_list>: 検索するパス名のリスト (スペース区切り)<options>: 検索オプション (後述)