CUDAカーネルのパフォーマンス分析に役立つtorch.cuda.nvtx.markの使い方
PyTorchのCUDAにおけるtorch.cuda.nvtx.markの詳細解説
torch.cuda.nvtx.mark
は、NVIDIAのNVTXフレームワークを利用して、CUDAカーネルの実行中に発生するイベントをマークするための関数です。この関数は、パフォーマンス分析やデバッグツールで、カーネルの実行時間や並行性を可視化するために使用できます。
使い方
torch.cuda.nvtx.mark
は以下の形式で使用します。
torch.cuda.nvtx.mark(name)
ここで、name
はイベントの名前を表す文字列です。イベントの名前は、パフォーマンス分析ツールでイベントを識別するために使用されます。
例
以下の例は、torch.cuda.nvtx.mark
を使用して、2つのカーネルの実行時間を計測する方法を示しています。
import torch
# カーネル1
def kernel1(x):
return x * x
# カーネル2
def kernel2(x):
return x + x
# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_start")
# カーネル1の実行
result1 = kernel1(torch.randn(1000))
# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_end")
# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_start")
# カーネル2の実行
result2 = kernel2(torch.randn(1000))
# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_end")
この例を実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。
kernel1_start
kernel1_end
これらのイベントの開始時間と終了時間を使用して、各カーネルの実行時間を計測することができます。
詳細
torch.cuda.nvtx.mark
は、以下のオプション引数を受け取ります。
domain
: イベントのドメインを表す文字列です。デフォルトは""
です。color
: イベントの色を表す整数です。デフォルトは-1
です。
これらのオプション引数は、パフォーマンス分析ツールでイベントをより詳細に表示するために使用できます。
注意事項
torch.cuda.nvtx.mark
は、CUDA 10.0以降が必要です。torch.cuda.nvtx.mark
は、パフォーマンス分析ツールで使用するためのものであり、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
補足
torch.cuda.nvtx.mark
以外にも、torch.cuda.nvtx.range_push
とtorch.cuda.nvtx.range_pop
を使用して、イベントの開始と終了を明示的に指定することができます。torch.cuda.nvtx
モジュールは、CUDAカーネルのパフォーマンス分析以外にも、デバッグやプロファイリングにも使用できます。
PyTorchのCUDAにおけるtorch.cuda.nvtx.markのサンプルコード
サンプルコード1: カーネルの実行時間を計測する
import torch
# カーネル1
def kernel1(x):
return x * x
# カーネル2
def kernel2(x):
return x + x
# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_start")
# カーネル1の実行
result1 = kernel1(torch.randn(1000))
# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_end")
# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_start")
# カーネル2の実行
result2 = kernel2(torch.randn(1000))
# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_end")
これらのイベントの開始時間と終了時間を使用して、各カーネルの実行時間を計測することができます。
サンプルコード2: イベントのドメインと色を設定する
import torch
# カーネル
def kernel(x):
return x * x
# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel_start", domain="my_domain", color=10)
# カーネルの実行
result = kernel(torch.randn(1000))
# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel_end", domain="my_domain", color=10)
このコードを実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。
kernel_start
(ドメイン:my_domain
, 色: 10)
イベントのドメインと色を設定することで、パフォーマンス分析ツールでイベントをより詳細に表示することができます。
サンプルコード3: イベントの範囲を明示的に指定する
import torch
# カーネル
def kernel(x):
return x * x
# イベントの範囲の開始
with torch.cuda.nvtx.range_push("kernel"):
# カーネルの実行
result = kernel(torch.randn(1000))
# イベントの範囲の終了
このコードを実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。
kernel
torch.cuda.nvtx.range_push
とtorch.cuda.nvtx.range_pop
を使用して、イベントの開始と終了を明示的に指定することができます。
CUDAカーネルの実行時間を計測する他の方法
CUDAイベントを使用する
CUDAイベントは、CUDAカーネルの実行時間計測のためにNVIDIAが提供している機能です。CUDAイベントを使用するには、以下の手順が必要です。
- CUDAイベントを作成する。
- カーネルの実行前にイベントを開始する。
- イベントの開始時間と終了時間を使用して、実行時間を計算する。
CUDAイベントを使用する方法は、以下のコード例を参照してください。
import torch
import cuda
# CUDAイベントを作成
start_event = cuda.Event()
end_event = cuda.Event()
# カーネルの実行前にイベントを開始
start_event.record()
# カーネルの実行
result = kernel(torch.randn(1000))
# カーネルの実行後にイベントを停止
end_event.record()
# イベントの開始時間と終了時間を使用して、実行時間を計算
execution_time = start_event.elapsed_time(end_event)
NVIDIA Nsight Systemsは、CUDAカーネルのパフォーマンス分析ツールです。NVIDIA Nsight Systemsを使用するには、以下の手順が必要です。
- NVIDIA Nsight Systemsをインストールする。
- CUDAカーネルを実行するアプリケーションを起動する。
- NVIDIA Nsight Systemsでアプリケーションを接続する。
- パフォーマンス分析画面で、カーネルの実行時間を確認する。
NVIDIA Nsight Systemsを使用する方法は、以下のドキュメントを参照してください。
その他の方法
上記以外にも、CUDAカーネルの実行時間を計測する方法はいくつかあります。
time
モジュールを使用するperf
コマンドを使用する- CUDAカーネルのプロファイリング機能を使用する
これらの方法は、それぞれ利点と欠点があります。最適な方法は、状況によって異なります。
CUDAカーネルの実行時間を計測する方法はいくつかあります。それぞれの方法の利点と欠点を理解して、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。
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