CUDAカーネルのパフォーマンス分析に役立つtorch.cuda.nvtx.markの使い方

2024-04-02

PyTorchのCUDAにおけるtorch.cuda.nvtx.markの詳細解説

torch.cuda.nvtx.markは、NVIDIAのNVTXフレームワークを利用して、CUDAカーネルの実行中に発生するイベントをマークするための関数です。この関数は、パフォーマンス分析やデバッグツールで、カーネルの実行時間や並行性を可視化するために使用できます。

使い方

torch.cuda.nvtx.markは以下の形式で使用します。

torch.cuda.nvtx.mark(name)

ここで、nameはイベントの名前を表す文字列です。イベントの名前は、パフォーマンス分析ツールでイベントを識別するために使用されます。

以下の例は、torch.cuda.nvtx.markを使用して、2つのカーネルの実行時間を計測する方法を示しています。

import torch

# カーネル1
def kernel1(x):
    return x * x

# カーネル2
def kernel2(x):
    return x + x

# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_start")

# カーネル1の実行
result1 = kernel1(torch.randn(1000))

# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_end")

# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_start")

# カーネル2の実行
result2 = kernel2(torch.randn(1000))

# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_end")

この例を実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。

  • kernel1_start
  • kernel1_end

これらのイベントの開始時間と終了時間を使用して、各カーネルの実行時間を計測することができます。

詳細

torch.cuda.nvtx.markは、以下のオプション引数を受け取ります。

  • domain: イベントのドメインを表す文字列です。デフォルトは""です。
  • color: イベントの色を表す整数です。デフォルトは-1です。

これらのオプション引数は、パフォーマンス分析ツールでイベントをより詳細に表示するために使用できます。

注意事項

  • torch.cuda.nvtx.markは、CUDA 10.0以降が必要です。
  • torch.cuda.nvtx.markは、パフォーマンス分析ツールで使用するためのものであり、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。

補足

  • torch.cuda.nvtx.mark以外にも、torch.cuda.nvtx.range_pushtorch.cuda.nvtx.range_popを使用して、イベントの開始と終了を明示的に指定することができます。
  • torch.cuda.nvtxモジュールは、CUDAカーネルのパフォーマンス分析以外にも、デバッグやプロファイリングにも使用できます。


PyTorchのCUDAにおけるtorch.cuda.nvtx.markのサンプルコード

サンプルコード1: カーネルの実行時間を計測する

import torch

# カーネル1
def kernel1(x):
    return x * x

# カーネル2
def kernel2(x):
    return x + x

# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_start")

# カーネル1の実行
result1 = kernel1(torch.randn(1000))

# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel1_end")

# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_start")

# カーネル2の実行
result2 = kernel2(torch.randn(1000))

# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel2_end")

これらのイベントの開始時間と終了時間を使用して、各カーネルの実行時間を計測することができます。

サンプルコード2: イベントのドメインと色を設定する

import torch

# カーネル
def kernel(x):
    return x * x

# イベントの開始
torch.cuda.nvtx.mark("kernel_start", domain="my_domain", color=10)

# カーネルの実行
result = kernel(torch.randn(1000))

# イベントの終了
torch.cuda.nvtx.mark("kernel_end", domain="my_domain", color=10)

このコードを実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。

  • kernel_start (ドメイン: my_domain, 色: 10)

イベントのドメインと色を設定することで、パフォーマンス分析ツールでイベントをより詳細に表示することができます。

サンプルコード3: イベントの範囲を明示的に指定する

import torch

# カーネル
def kernel(x):
    return x * x

# イベントの範囲の開始
with torch.cuda.nvtx.range_push("kernel"):

    # カーネルの実行
    result = kernel(torch.randn(1000))

# イベントの範囲の終了

このコードを実行すると、パフォーマンス分析ツールで以下のイベントが表示されます。

  • kernel

torch.cuda.nvtx.range_pushtorch.cuda.nvtx.range_popを使用して、イベントの開始と終了を明示的に指定することができます。



CUDAカーネルの実行時間を計測する他の方法

CUDAイベントを使用する

CUDAイベントは、CUDAカーネルの実行時間計測のためにNVIDIAが提供している機能です。CUDAイベントを使用するには、以下の手順が必要です。

  1. CUDAイベントを作成する。
  2. カーネルの実行前にイベントを開始する。
  3. イベントの開始時間と終了時間を使用して、実行時間を計算する。

CUDAイベントを使用する方法は、以下のコード例を参照してください。

import torch
import cuda

# CUDAイベントを作成
start_event = cuda.Event()
end_event = cuda.Event()

# カーネルの実行前にイベントを開始
start_event.record()

# カーネルの実行
result = kernel(torch.randn(1000))

# カーネルの実行後にイベントを停止
end_event.record()

# イベントの開始時間と終了時間を使用して、実行時間を計算
execution_time = start_event.elapsed_time(end_event)

NVIDIA Nsight Systemsは、CUDAカーネルのパフォーマンス分析ツールです。NVIDIA Nsight Systemsを使用するには、以下の手順が必要です。

  1. NVIDIA Nsight Systemsをインストールする。
  2. CUDAカーネルを実行するアプリケーションを起動する。
  3. NVIDIA Nsight Systemsでアプリケーションを接続する。
  4. パフォーマンス分析画面で、カーネルの実行時間を確認する。

NVIDIA Nsight Systemsを使用する方法は、以下のドキュメントを参照してください。

その他の方法

上記以外にも、CUDAカーネルの実行時間を計測する方法はいくつかあります。

  • timeモジュールを使用する
  • perfコマンドを使用する
  • CUDAカーネルのプロファイリング機能を使用する

これらの方法は、それぞれ利点と欠点があります。最適な方法は、状況によって異なります。

CUDAカーネルの実行時間を計測する方法はいくつかあります。それぞれの方法の利点と欠点を理解して、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。




PyTorch CUDA synchronize の使い方: GPUとCPU間のデータ転送を効率的に制御

このチュートリアルでは、以下の内容を解説します。torch. cuda. synchronize()の役割torch. cuda. synchronize()の役割PyTorchでは、GPU上で実行されるCUDAカーネルは非同期的に実行されます。つまり、CPUスレッドは、すべてのカーネルが完了するのを待たずに次のタスクに進むことができます。これは、パフォーマンスを向上させるために有効ですが、タイミングの問題を引き起こす可能性もあります。



複数のプロセスでPyTorch CUDA メモリを効率的に共有する方法

torch. cuda. set_per_process_memory_fractionは、PyTorchでCUDAを使用する際に、プロセスごとに割り当てるGPUメモリの上限を設定するための関数です。複数のプロセスが同じGPUを使用する場合、この関数を使用してメモリ競合を防ぐことができます。


GPU並行処理の秘訣!PyTorchにおけるtorch.cuda.set_streamの役割と使い方

CUDAストリームは、GPU上で行われる計算を順序付けするための仮想的なキューです。複数のストリームを作成し、それぞれ異なる計算を割り当てることで、並行処理を実現することができます。torch. cuda. set_streamは、現在のスレッドで実行されるすべての計算を指定されたストリームに割り当てます。この関数を使うことで、コード内の特定の部分を特定のストリームに割り当て、並行処理を制御することができます。


PyTorchでCUDAの乱数生成を制御:torch.cuda.set_rng_state_allの威力を体感しよう

すべてのGPUの乱数ジェネレータの状態を、指定された状態に設定します。異なるGPU間で乱数生成結果を再現可能にするために使用されます。ディープラーニングの訓練において、再現性のある結果を得るために役立ちます。new_state: すべてのGPUの乱数ジェネレータに設定する状態を表すテンソル。torch


PyTorch DDP Communication Hooks で DDP トレーニングを最適化

PowerSGDは、DDPトレーニングにおける通信効率を向上させるために提案された勾配圧縮アルゴリズムです。従来のアルゴリズムとは異なり、PowerSGDは勾配の全要素を送信するのではなく、勾配のスパースな表現を送信することで、通信量を削減します。



画像認識におけるアダプティブプーリングの重要性と torch.nn.functional.adaptive_avg_pool3d の役割

3次元入力テンソルのプーリング: 画像や動画など、3次元データの処理に適しています。アダプティブな出力サイズ: 出力サイズを事前に指定する必要がなく、入力テンソルに合わせて自動的に調整されます。チャンネルごとの平均プーリング: 各チャンネルの空間情報を保持しながら、特徴量の次元削減を行います。


PyTorch Miscellaneous モジュール:ディープラーニング開発を効率化するユーティリティ

このモジュールは、以下のサブモジュールで構成されています。データ処理torch. utils. data:データセットの読み込み、バッチ化、シャッフルなど、データ処理のためのツールを提供します。 DataLoader:データセットを効率的に読み込み、イテレートするためのクラス Dataset:データセットを表す抽象クラス Sampler:データセットからサンプルを取得するためのクラス


PyTorch初心者向け:torch.amaxでテンソルの最大値を取得する方法

この例では、x という 2 次元テンソルを作成し、torch. amax を使って最大値を取得しています。結果は 6 であり、これは x 内のすべての要素の中で最大の値です。torch. amax は、軸を指定することで、特定の次元における最大値を取得することもできます。


バッチ処理、GPU上での計算にも対応!PyTorch torch.detの便利な機能

torch. det の使い方この例では、2 行 2 列の行列 A の行列式を計算し、結果を出力しています。torch. det の引数input: 行列式を計算したい正方行列。torch. Tensor 型で、バッチ処理にも対応しています。


PyTorch Quantization:ObserverBase.with_callable_args()を使いこなしてモデルを軽量化

Quantizationは、モデルの重みと活性化関数を、浮動小数点型から低精度な整数型に変換することで、モデルサイズと推論速度を削減します。主に以下の2種類があります。静的量子化: トレーニング後にモデルを量子化する。動的量子化: 推論時にモデルを量子化する。