CMakeポリシー CMP0044 でソースファイル名の重複を検知する
CMakeポリシー CMP0044 の詳細解説
CMakeポリシー CMP0044 は、CMake 3.13 で導入された新しいポリシーで、target_sources
コマンドでソースファイルのリストを指定する際、ファイル名の重複を検知し、警告またはエラーを出力する機能を提供します。このポリシーは、プロジェクト内のソースファイル管理をより厳格にし、ビルドエラーを防ぐために役立ちます。
設定方法
CMP0044 ポリシーを設定するには、CMakeLists.txt ファイルで以下のコマンドを使用します。
cmake_policy(CMP0044 NEW)
このコマンドを実行すると、target_sources
コマンドで指定されたソースファイル名の重複が検知された場合、警告またはエラーが出力されます。
動作
CMP0044 ポリシーが有効な場合、target_sources
コマンドで指定されたソースファイル名の重複が検知されると、以下の動作が発生します。
- CMAKE_POLICY_CMP0044_ALLOW_DUPLICATES オプションが設定されていない場合:
- 警告またはエラーメッセージが出力されます。
- 警告メッセージの場合は、ビルドは続行されます。
- エラーメッセージの場合は、ビルドが中止されます。
- CMAKE_POLICY_CMP0044_ALLOW_DUPLICATES オプションが設定されている場合:
- 警告メッセージのみが出力されます。
- ビルドは続行されます。
オプション
CMP0044 ポリシーには、以下のオプションが用意されています。
- CMAKE_POLICY_CMP0044_ALLOW_DUPLICATES:
- ソースファイル名の重複を許可するかどうかを指定します。
- デフォルトは
FALSE
です。 TRUE
に設定すると、警告メッセージのみが出力されます。
例
以下の例は、CMP0044 ポリシーを使用して、ソースファイル名の重複を検知する方法を示しています。
cmake_policy(CMP0044 NEW)
target_sources(my_target
PUBLIC
main.c
foo.c
bar.c
PRIVATE
baz.c
)
この例では、my_target
ターゲットに対して、main.c
、foo.c
、bar.c
、baz.c
の 4 つのソースファイルが指定されています。
main.c
とfoo.c
は同じ名前のファイルなので、CMP0044 ポリシーによって警告またはエラーメッセージが出力されます。bar.c
とbaz.c
は異なる名前のファイルなので、警告またはエラーメッセージは出力されません。
注意事項
- CMP0044 ポリシーは、CMake 3.13 以降でのみ使用できます。
- CMP0044 ポリシーは、デフォルトで有効になっています。
- CMP0044 ポリシーは、ソースファイル名の重複のみを検知します。ファイルの内容が重複していても、検知されません。
CMake ポリシー CMP0044 のサンプルコード
警告メッセージを出力する例
cmake_policy(CMP0044 NEW)
target_sources(my_target
PUBLIC
main.c
foo.c
bar.c
PRIVATE
baz.c
)
CMake Warning at CMakeLists.txt:10 (target_sources):
Source file "foo.c" has already been listed for target "my_target".
エラーメッセージを出力する例
cmake_policy(CMP0044 NEW)
cmake_policy(SET CMP0044_ALLOW_DUPLICATES FALSE)
target_sources(my_target
PUBLIC
main.c
foo.c
bar.c
PRIVATE
baz.c
)
この例は、上記の例に CMAKE_POLICY_CMP0044_ALLOW_DUPLICATES
オプションを追加したものです。このオプションを FALSE
に設定すると、ソースファイル名の重複が検知された場合、エラーメッセージが出力されます。
CMake Error at CMakeLists.txt:10 (target_sources):
Source file "foo.c" has already been listed for target "my_target".
重複を許可する例
cmake_policy(CMP0044 NEW)
cmake_policy(SET CMP0044_ALLOW_DUPLICATES TRUE)
target_sources(my_target
PUBLIC
main.c
foo.c
bar.c
PRIVATE
baz.c
)
この例は、上記の例に CMAKE_POLICY_CMP0044_ALLOW_DUPLICATES
オプションを追加したものです。このオプションを TRUE
に設定すると、ソースファイル名の重複が検知されても、警告メッセージのみが出力されます。
CMake Warning at CMakeLists.txt:10 (target_sources):
Source file "foo.c" has already been listed for target "my_target".
複数ターゲットで重複を検知する例
cmake_policy(CMP0044 NEW)
target_sources(my_target1
PUBLIC
main.c
foo.c
bar.c
)
target_sources(my_target2
PUBLIC
foo.c
baz.c
)
この例では、my_target1
と my_target2
の 2 つのターゲットに対して、main.c
、foo.c
、bar.c
、baz.c
の 4 つのソースファイルが指定されています。
foo.c
はmy_target1
とmy_target2
の両方のターゲットで指定されているので、CMP0044 ポリシーによって警告メッセージが出力されます。
CMake Warning at CMakeLists.txt:10 (target_sources):
Source file "foo.c" has already been listed for target "my_target1".
CMake Warning at CMakeLists.txt:16 (target_sources):
Source file "foo.c" has already been listed for target "my_target2".
特定のディレクトリ内の重複のみを検知する例
cmake_policy(CMP0044 NEW)
set(SRC_DIR "${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/src")
target_sources(my_target
PUBLIC
${SRC_DIR}/main.c
${SRC_DIR}/foo.c
bar.c
)
target_sources(my_target2
PUBLIC
${SRC_DIR}/foo.c
baz.c
)
この例は、上記の例に SRC_DIR
手動でチェックする
すべてのソースファイルの名前をリストアップし、重複がないことを手動で確認します。この方法は、プロジェクト規模が小さい場合にのみ有効です。
スクリプトを使用する
重複を検知するためのスクリプトを作成します。スクリプトは、すべてのソースファイルの名前をリストアップし、重複がないことを確認します。この方法は、プロジェクト規模が大きくなってきた場合に有効です。
外部ツールを使用する
重複を検知するための外部ツールを使用します。いくつかの外部ツールが公開されています。
以下は、CMake 3.13 以前のバージョンの CMake でソースファイル名の重複を検知するために使用できる外部ツールの例です。
これらのツールは、ソースファイル名の重複だけでなく、その他の潜在的な問題も検知することができます。
CMake のカスタムターゲットを使用する
以下の例は、CMake のカスタムターゲットを使用して、ソースファイル名の重複を検知する方法を示しています。
add_custom_target(check_source_file_duplicates
COMMAND ${CMAKE_COMMAND} -E
list(REMOVE_DUPLICATES SOURCE_FILES)
COMMAND ${CMAKE_COMMAND} -E
message("The following source files have duplicate names:")
COMMAND ${CMAKE_COMMAND} -E
foreach(FILE ${SOURCE_FILES})
message(" ${FILE}")
endforeach()
)
add_dependencies(my_target check_source_file_duplicates)
この例では、check_source_file_duplicates
という名前のカスタムターゲットを作成しています。このターゲットは、以下のコマンドを実行します。
SOURCE_FILES
変数から重複するファイル名を削除します。- 重複するファイル名のリストを出力します。
my_target
ターゲットは、check_source_file_duplicates
ターゲットに依存しています。このため、my_target
ターゲットをビルドする前に、check_source_file_duplicates
ターゲットが実行されます。
注意事項
- 上記の方法を使用する場合は、CMake のバージョンによって動作が異なる場合があります。
- 外部ツールを使用する場合は、ツールの使い方を理解する必要があります。
これらの点を考慮して、プロジェクトに合った方法を選択してください。
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