ZeroRedundancyOptimizerとDistributedDataParallelの比較
PyTorchの分散オプティマイザー torch.distributed.optim.ZeroRedundancyOptimizer.step()
は、大規模なモデルを複数GPUで訓練する際に、メモリ使用量を削減するために用いられる関数です。従来の分散オプティマイザーと異なり、各GPUはモデルパラメータの全てを保持するのではなく、一部のみを保持することでメモリ使用量を抑えます。
仕組み
ZeroRedundancyOptimizer
は、以下の手順で動作します。
- モデルパラメータを、各GPUのメモリ容量に基づいて複数のシャードに分割します。
- 各GPUは、割り当てられたシャードのみを保持します。
- 訓練ステップごとに、各GPUは割り当てられたシャードの勾配を計算します。
- 計算された勾配は、すべてのGPU間で通信されます。
- 各GPUは、通信された勾配を使用して、割り当てられたシャードのパラメータを更新します。
利点
- メモリ使用量を削減できる
- 大規模なモデルを複数GPUで訓練できる
欠点
- パラメータ更新の順序がランダムになるため、訓練の収束速度が遅くなる可能性がある
- 実装が複雑
コード例
import torch
import torch.distributed as dist
# 分散訓練の設定
dist.init_process_group("nccl", init_method="env://")
# モデルとオプティマイザーの定義
model = torch.nn.Linear(10, 1)
optimizer = ZeroRedundancyOptimizer(model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(10):
# データの読み込み
...
# 勾配計算
model.zero_grad()
loss = model(data).loss()
loss.backward()
# パラメータ更新
optimizer.step()
# 訓練終了
dist.destroy_process_group()
補足
ZeroRedundancyOptimizer
は、PyTorch 1.7以降で使用可能です。
ZeroRedundancyOptimizer
以外にも、DistributedDataParallel
と組み合わせることでメモリ使用量を削減できる分散オプティマイザーがいくつかあります。詳細は、PyTorchのドキュメントを参照してください。
PyTorchの分散オプティマイザー「torch.distributed.optim.ZeroRedundancyOptimizer.step()」のサンプルコード
シンプルな例
import torch
import torch.distributed as dist
# 分散訓練の設定
dist.init_process_group("nccl", init_method="env://")
# モデルとオプティマイザーの定義
model = torch.nn.Linear(10, 1)
optimizer = ZeroRedundancyOptimizer(model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(10):
# データの読み込み
...
# 勾配計算
model.zero_grad()
loss = model(data).loss()
loss.backward()
# パラメータ更新
optimizer.step()
# 訓練終了
dist.destroy_process_group()
データ並列と組み合わせる例
import torch
import torch.distributed as dist
import torch.nn.parallel as nn
# 分散訓練の設定
dist.init_process_group("nccl", init_method="env://")
# モデルとオプティマイザーの定義
model = torch.nn.Linear(10, 1)
model = nn.DataParallel(model)
optimizer = ZeroRedundancyOptimizer(model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(10):
# データの読み込み
...
# 勾配計算
model.zero_grad()
loss = model(data).loss()
loss.backward()
# パラメータ更新
optimizer.step()
# 訓練終了
dist.destroy_process_group()
チェックポイントの保存と復元に組み合わせる例
import torch
import torch.distributed as dist
import torch.nn.parallel as nn
import torch.optim as optim
# 分散訓練の設定
dist.init_process_group("nccl", init_method="env://")
# モデルとオプティマイザーの定義
model = torch.nn.Linear(10, 1)
model = nn.DataParallel(model)
optimizer = ZeroRedundancyOptimizer(model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(10):
# データの読み込み
...
# 勾配計算
model.zero_grad()
loss = model(data).loss()
loss.backward()
# パラメータ更新
optimizer.step()
# チェックポイントの保存
if epoch % 10 == 0:
torch.save(model.state_dict(), "checkpoint.pth")
# 訓練終了
dist.destroy_process_group()
# モデルの復元
model = torch.nn.Linear(10, 1)
model.load_state_dict(torch.load("checkpoint.pth"))
PyTorchの分散オプティマイザー「torch.distributed.optim.ZeroRedundancyOptimizer.step()」以外の方法
DistributedDataParallel
import torch
import torch.distributed as dist
import torch.nn.parallel as nn
# 分散訓練の設定
dist.init_process_group("nccl", init_method="env://")
# モデルとオプティマイザーの定義
model = torch.nn.Linear(10, 1)
model = nn.DistributedDataParallel(model)
optimizer = torch.optim.SGD(model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(10):
# データの読み込み
...
# 勾配計算
model.zero_grad()
loss = model(data).loss()
loss.backward()
# パラメータ更新
optimizer.step()
# 訓練終了
dist.destroy_process_group()
手動でパラメータを分割する
ZeroRedundancyOptimizer
以外にも、手動でパラメータを分割して分散訓練を行う方法があります。この方法は、より柔軟な制御が可能ですが、実装が複雑になります。
その他のライブラリ
PyTorch以外にも、HorovodやDeepSpeedなどの分散訓練用のライブラリがあります。これらのライブラリは、ZeroRedundancyOptimizer
などの分散オプティマイザーを自動的に設定してくれるので、より簡単に分散訓練を行うことができます。
どの方法を選択するべきかは、以下の要素を考慮する必要があります。
- モデルのサイズ
- 使用可能なGPUのメモリ容量
- 必要な柔軟性
- 実装の複雑さ
ZeroRedundancyOptimizer
は、大規模なモデルを複数GPUで訓練する際にメモリ使用量を削減するために用いられる分散オプティマイザーです。他にも、DistributedDataParallel
や手動でのパラメータ分割などの方法があります。どの方法を選択するべきかは、上記の要素を考慮する必要があります。
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