CMakeでOpenGLアプリケーション開発を行う際の注意点
CMake ポリシー CMP0072 は、FindOpenGL
モジュールが OpenGL ライブラリを選択する際の動作を制御します。このポリシーは CMake 3.11 で導入されました。
背景
従来の OpenGL は、libGL.so
などの単一のライブラリで提供されていました。しかし、近年では GLVND (GL Vendor Neutral Dispatch)と呼ばれる新しい仕組みが導入されています。GLVND は、複数の OpenGL ベンダーのライブラリを抽象化し、統一されたインターフェースを提供します。
FindOpenGL
モジュールは、以下の条件を満たす場合、GLVND ライブラリを優先的に選択します。
- CMake バージョンが 3.11 以上である
- GLVND ライブラリが利用可能である
OpenGL_GL_PREFERENCE
変数が設定されていない
CMP0072 ポリシーは、FindOpenGL
モジュールの動作を以下の3つのオプションから選択するために使用されます。
- NEW (デフォルト): GLVND ライブラリを優先的に選択する
- OLD: 従来の OpenGL ライブラリを優先的に選択する
- COMPATIBILITY: CMake 3.10 以前の動作に準拠する
設定方法
CMP0072 ポリシーは以下の方法で設定できます。
cmake_policy()
コマンドを使用するcmake_minimum_required()
コマンドを使用する
例
# CMake 3.11 以降の場合
cmake_policy(CMP0072 NEW)
# 従来の OpenGL ライブラリを使用したい場合
cmake_policy(CMP0072 OLD)
注意事項
- CMP0072 ポリシーは、CMake 3.11 以降でのみ使用できます。
- ポリシーを設定していない場合、
FindOpenGL
モジュールは NEW オプションとして動作し、GLVND ライブラリを優先的に選択します。 - GLVND ライブラリが利用できない場合、
FindOpenGL
モジュールは従来の OpenGL ライブラリを選択します。
補足
- GLVND は、OpenGL のバージョン 3.2 以降でサポートされています。
- GLVND ライブラリは、多くの Linux ディストリビューションでデフォルトでインストールされています。
CMake ポリシー CMP0072 を使用したサンプルコード
CMake 3.11 以降で GLVND ライブラリを優先的に選択する
cmake_minimum_required(VERSION 3.11)
# デフォルトでは NEW オプションなので、あえて設定する必要はありません
# cmake_policy(CMP0072 NEW)
find_package(OpenGL REQUIRED)
# OpenGL ライブラリの使用例
message(STATUS "OpenGL version: ${OPENGL_VERSION}")
従来の OpenGL ライブラリを使用する
cmake_minimum_required(VERSION 3.11)
cmake_policy(CMP0072 OLD)
find_package(OpenGL REQUIRED)
# OpenGL ライブラリの使用例
message(STATUS "OpenGL version: ${OPENGL_VERSION}")
CMake 3.10 以前の動作に準拠する
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
# CMake 3.10 以前では CMP0072 ポリシーは存在しない
find_package(OpenGL REQUIRED)
# OpenGL ライブラリの使用例
message(STATUS "OpenGL version: ${OPENGL_VERSION}")
GLVND ライブラリの利用可否を確認する
cmake_minimum_required(VERSION 3.11)
if(POLICY CMP0072)
# CMake 3.11 以降の場合
if(CMAKE_POLICY_CMP0072_NEW)
message(STATUS "GLVND ライブラリは利用可能です")
else()
message(STATUS "GLVND ライブラリは利用できません")
endif()
else()
# CMake 3.10 以前の場合
message(STATUS "GLVND ライブラリの利用可否は不明です")
endif()
GLVND ライブラリのバージョンを取得する
cmake_minimum_required(VERSION 3.11)
find_package(OpenGL REQUIRED)
if(OPENGL_FOUND)
if(GLVND_FOUND)
message(STATUS "GLVND version: ${GLVND_VERSION}")
else()
message(STATUS "GLVND ライブラリは利用できません")
endif()
else()
message(STATUS "OpenGL ライブラリが見つかりません")
endif()
補足
- 上記のサンプルコードは、あくまでも参考です。実際のプロジェクトでは、必要に応じて修正してください。
CMake で OpenGL ライブラリを選択する他の方法
OpenGL_LIBRARY 変数を設定する
FindOpenGL
モジュールは、OpenGL_LIBRARY
変数が設定されている場合は、そのライブラリを優先的に選択します。
set(OpenGL_LIBRARY /path/to/opengl.so)
find_package(OpenGL REQUIRED)
# OpenGL ライブラリの使用例
message(STATUS "OpenGL version: ${OPENGL_VERSION}")
find_library()
コマンドを使用して、OpenGL ライブラリを手動で検索することができます。
find_library(OpenGL NAMES GL GLU)
if(OpenGL_FOUND)
# OpenGL ライブラリの使用例
message(STATUS "OpenGL version: ${OPENGL_VERSION}")
else()
message(STATUS "OpenGL ライブラリが見つかりません")
endif()
外部プロジェクトを使用する
CMake で OpenGL ライブラリを管理するよりも、外部プロジェクト (例: Cinder: https://libcinder.org/) を使用して OpenGL アプリケーション開発を行う方が便利な場合があります。
CMake で OpenGL ライブラリを選択する方法はいくつかあります。プロジェクトの規模や複雑さ、開発環境などを考慮して、最適な方法を選択してください。
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